相手を思いやる心を
日本の文化とともに
日本人にとって深く根付いているお茶文化ですが、もともと茶事とは接待のことであり、対話を通じて親交を深めるためのものでした。フランスで言えば、自宅にお招きして、シャンパンをいただくのは、まさに日本で言う茶事であり、接待そのものです。その日本の古典的な体験が味わえる場所が、茶懐石秋吉です。
私は、20年間お茶を学ぶことで日本料理の原点を知ることができました。一言で言えば、文化と言えるかもしれませんが、相手を思いやる心こそが日本料理の奥深くに存在しています。相手に尽くして喜んでもらいたいという精神と伝わった時のお客様から湧き出る感謝の気持ち。亭主とお客様の双方が満足できるように、まずは私から心を尽くしたい。世界中のあらゆる場所でそのような心が通う関係性を築くこと、それを日本料理を入り口として、世界に伝えていくことこそが私の使命と考えています。
亭主 秋吉雄一朗
1984年生まれ、福岡県飯塚市出身。京都・瓢亭で10年の修行。その後、在パリOECD大使公邸料理長に就任、3年間パリにて日本料理を振る舞う。帰国後、AIC秋津洲京都にて期間限定で日本料理店を開く。その他、高級料理旅館の期間限定料理長や、出張料理人として日本全国を周る。その間に株式会社わびを設立。福岡に淡麗らぁ麺明鏡志水を創立。コロナ禍を抜け、フランス・パリに茶懐石秋吉をオープン。
茶懐石とは
茶懐石料理とは、茶事に出される料理とされ、懐石料理と呼ばれます。この懐石という言葉は「禅」に由来しています。修行中の禅僧は、昼以外の食事が許されていませんでした。寒中の修行では、石を温めて布に包み、懐に入れて寒さと空腹をしのいだそうです。この温めた石を温石(おんじゃく)または薬石(やくせき)と呼び、この石を懐に抱いたので「懐石」の名が出たとされています。
その後、禅の影響を受けた茶の湯では、茶事に出す軽食を「懐石」と呼ぶようになりました。それは、温石で腹を温める程度の空腹しのぎという意味だったようです。また、濃茶(こいちゃ)は空腹に飲むと、刺激が強く、苦味を強く感じて本来の味が味わえません。そのため濃茶をおいしくいただくためにも懐石料理が出されています。
茶事に懐石料理を出すようになったのは、室町時代に入ってからのことと言われています。安土桃山時代に「千利休」が懐石料理の原形を作ったとされ、時代を経て江戸時代末期に確立しました。茶事に組み込まれた懐石料理は、旬の食材を用いて、素材の持ち味や季節感を活かした料理であり、心を込めてお客様をもてなすところにその狙いや真髄があるとされています。
59 Rue Letellier, 75015 Paris FRANCE
E-mail: wabijaponparis@gmail.com